沖縄・こころのエッセイ<29>

福島原発事故の隠された恐怖?

屋良幸助 (那覇市文化協会・事務局長)

最近、テレビをみていると、ショッキングなニュースが飛び込んできた。それは、アメリカから来た原発の学者の発言だ。  『福島原発の4号機には、使用済みの核燃料棒が3150本、保管されている。この保管されている容器が、もしも破壊されたら、人類史上、最大の事故になる。 放射能汚染で4000万人の人が避難しなければならないだろう。震度7の地震、その他の事故で、保管している容器が破壊される危険性がある。それを自分がもっとも怖れている』という内容であった。    4号機だけで、広島の原爆の放射能の4000倍から、5000倍の放射能を出すという。想像するだけでも恐ろしいことである。それで保管している容器をクレーンで、吊り上げて取り出すにしても、どこかで不具合が生じた場合、大変な危険が伴う。そのような事態になれば、首都東京にも大きな災害が生じることになる。もちろん、福島を中心にした東北、関東、東京までも放射能汚染の影響を受ける。  次は地下水の放射能の汚染の恐怖である。このことについては、江口 工著の「地下水放射能汚染と地震」(東電が見落とした新たな危険)を読んで、 愕然とした。  江口氏は、鉱究工業株式会社前社長・工学博士で、60年にわたって国内、旧ソ連、アフリカなどで、鉱山の採掘調査、地下地質調査を行い、世界的にその名が知られている。  チェルノブイリ原発事故の翌日、モスクワから3名の技術者が訪れて、事故の終息方法について尋ねられた。1つ目は、メルトダウンした原発、地下からの放射能の流出をどう防ぐか、地上部はヘリコプターから多量のコンクリートを降下して対処したが、地下部は全く対策をしていない。  原発の東側に川があり、放射能汚染水が流れ込まないようにするための対策、この川の下流に、キエフ(現・ウクライナの首都)があり、地下水汚染で死の町になる可能性もあった。  地上は高濃度の放射線量のため、作業が困難、地下工事の施工のために、作業トンネルを掘削し、セメント注入法の採用を提案。氏の提案を受け入れて、tチェルノブイリは地下水汚染を封じ込めたのである。    一般に、空中拡散だけが取り上げられているが、風に乗って500kmや600q ?を飛んでいくものではない。しかし、地下水は汚染が広がれば、はてしなく遠くまで流れていく。チェルノブイリ事故の際は、汚染された地下水がドイツ、フランスまで届いたという話もある。  海の汚染は日本周辺まで達したことが分かる。原発周辺で汚染された地下水はそのまま海に流れるだけではない。汚染された地下水は、東西南北、どこへでも流れていく。  福島から200q離れた、東京の地下水も汚染の危機が迫っている。福島原発については、地下水汚染の対策が5月22日現在まで、何もなされていない。江口氏によれば、去年の事故直後から原発周辺のモリタリング調査をして、地下水の放射線量を測定して、汚染水を封じ込めることを提案している。氏の1年余の熱心な提案にも関わらず、政府も、東電も動いていない。  夥しい汚染水が200km?離れた海に流れ出し、また、地下に汚染水が流れていると推測される。  東京は、飲料水の25%を地下水を利用しているという。地下水が汚染されれば、都民の生活を直撃することになる。  政府、東電はもっと真剣に原発の専門家の英知を結集して、福島原発のこれから起こりうる大災害の芽を摘み、未然に防ぐことに全力を傾注してほしいとただただ祈るものである。