●音楽の歴史
音楽の歴史(音楽史)には、様々な研究方法があります。時代に基づいたもの、地域別のもの、音楽理論を基にしたものなど。 研究者によって違う意見があるものの、共通するものを見出す努力を今日でも続けられています。 ここでは音楽の起源と西洋音楽の歴史について触れています。
音楽の起源
「音楽」はどのようにして生まれたのか。この答えに「これです。」という確証されたものはありません。
鳥のさえずりを真似して生まれたものか、人の声の高低から音階が生まれたのか。また、リズムについては手拍子から生まれたのか、または石器をたたいているうちに生み出されたものかもしれません。
世界で最も古いとされるメソポタミア文明の頃の遺跡からは、ハープや笛・太鼓などが発見されています。
これを考えると人類が声を発しはじめてからまもなく「音楽」が生まれたと言えるかもしれませんね。
エジプト文明では祭りなどで盛んに楽器などが演奏されていましたようです。ピラミッドの中からもハープや太鼓クラリネットなども発見されています。また、象形文字で楽譜のようなものも刻まれていたと言われているので、この頃にはもう作曲や合奏なども行われていたのでしょう。
古代ギリシャ音楽: 6世紀以前の音楽
この時代は詩や演劇がとても盛んで、人々の生活にはなくてはならないものになっていました。ギリシャ演劇は後に「オペラ」が創り出されたきっかけになったと言われています。 楽器としては、リラやハープなどが歌の伴奏に使われ、アウロスが踊りの伴奏に使われていました。(この頃はまだ楽器そのものとして独立したものではなく「伴奏」として使われていました。) そして後に科学の発達にともなってギリシャ人は音楽理論を創り出し、ピュタゴラス音階や文字譜などが生まれました。
中世西洋音楽: 6世紀頃から15世紀頃にかけての音楽
この時代はキリスト教がもっとも熱心に信仰された時代であり、音楽もキリスト教会を中心に発達しました。 6世紀の終わり頃、ローマ教皇グレゴリウス1世が各地方の聖歌を集めて統一したグレゴリオ聖歌が生まれました。最初は一つのメロディを独唱、斉唱する単旋律のものでしたが後に楽譜の初期のものが生まれ、メロディを重ね合わせていくようになりました。
グレゴリオ聖歌
ルネサンス期の音楽: 15世紀から16世紀頃の音楽
中世西洋音楽とバロック音楽の間に位置するこの時代の音楽は、主に宗教音楽です。これはこの時代の音楽家のほとんどが教会に雇われていたからです。よく「教会音楽」というとイメージされるような、いくつかの旋律が重なったポリフォニーと呼ばれる音楽でした。また声楽が主要ではあったものの、オルガンや弦楽器、管楽器といった楽器も用いられるようになりました。
ポリフォニー音楽
バロック音楽: 17世紀初頭から18世紀半ばの音楽
「バロック」という名前はポルトガル語が語源で「いびつな真珠」という意味です。なぜこう呼ばれていたのでしょう。もともとは過剰な建築を批判するもとして使われましたが、それが転じて音楽の分野でもルネサンス時代の形式に沿ったものから離れ自由化していったことに対しての批判から生まれたものと考えられます。
ただ20世紀になってこのバロックの音楽は見直され現在では世界中で愛されています。
合奏協奏曲(弦楽器を中心に、チェンバロを加えた編成で、合奏と独奏が交互に演奏される形式)やオペラが有名です。
有名な音楽家:バッハ(1685〜1750) / ヘンデル(1685〜1759) / ビバルディ(1677頃〜1741)
バッハ チェンバロ協奏曲 第1番 ニ短調 BWV1052
古典派音楽: 1750年代以降の音楽
交響曲の父として知られるハイドン、多くの人に知られているベートーヴェン、モーツァルトがこの時代の音楽家。それまで教会や宮廷のものであった音楽を一般市民も聴くようになりました。
古典とは「古い書物」という意味で、以前のギリシャ・ローマの文芸を見直そうという運動が音楽の分野にも広がったところから名づけられました。
有名な音楽家:ハイドン(1732〜1809) / モーツァルト(1756〜1791) / ベートーヴェン(1770〜1827)
モーツァルト 交響曲 第25番 ト短調
ロマン派音楽: 19世紀のヨーロッパを中心とする音楽
多くの音楽家たちが自由な立場で、それぞれの個性を出して創りあげていきました。美しいメロディや和音が特徴です。ロマン派の「ロマン」は中世の騎士の物語のような、恋愛や夢、空想を内容とする物語「ロマンス」が由来しています。ピアノも以前からあったもののこの頃改良されて演奏会などで演奏されるようになりました。
そのため、この時代の有名な音楽家はピアノの協奏曲などが多いのでしょう。
有名な音楽家:シューベルト(1797〜1828)/ ショパン(1810〜1849) / ブラームス(1833〜1897)
ショパン ノクターン 第2番
国民学の音楽: 19世紀中頃の音楽
自国の古い伝統・歴史・風土をへの感情を強く現わした芸術的な音楽が作られるようになりました。中でも「ロシア国民楽派5人組」と呼ばれる音楽家たちが現代でも大変有名です。
ロシア国民楽派5人組:チャイコフスキー・スメタナ・ドボルザーク・グリーク・シベリウス
スメタナ 「わが祖国」より「モルダウ」
近代・現代音楽: 20世紀以降の音楽
時代区分ではなく、前衛音楽としての形式を指します。それまでの長調や短調などにとらわれず、無調の曲や十二音音楽などが生み出されました。聴いている側では「リズムが複雑」「和音が不協和音」などと感じられることが多く、形式にのっとった古典派の音楽を好む人にはあまり好かれないこともあります。それからさらに進化して電子楽器が使われたりするようになりました。
有名な音楽家:ドビュッシー(1862〜1918) / ラベル(1875〜1937) / バルトーク(1881〜1945)
ドビュッシー 亜麻色の髪の乙女
シェーンベルク Five Piano Pieces, Op. 23(十二音音楽)